教員紹介

 社会科学専修では,法学・政治学・経済学・社会学・マスコミュニケーション学の分野の13人の専任教員が密に協力しつつ,学生の指導と研究を進めています。

伊藤 守 (Mamoru Ito)  社会学 - メディア研究

■教育・研究内容
 テレビを中心にしたメディア研究を専門分野として,理論的な研究と実証的な研究,その双方を研究の柱にしてきました。具体的には,メディアは人間が生きる上で基本的な地平=時空間を構成している科学技術であり,この技術と人間とのかかわりを理論的に考察すること,また文化,政治,社会運動などとの関連で現代のメディアが果たしている機能や問題点を考察することをテーマにしています。
 ゼミの学生諸君は,都市,消費,メディア文化,映画,テレビ,ソーシャルメディア等に着目しながらメディアと現代社会の諸問題にアプローチしています。
■主要著作
 ・編著書『アフター・テレビジョン・スタディーズ』せりか書房,2014年.
 ・著書『情動の権力』せりか書房,2013年.
 ・著書『ドキュメント テレビは原発事故をどう伝えたか』平凡社新書,2012年.
■教員からのメッセージ
 大学に入学したからといって「大学生」になれるわけではありません。学問を学ぶ「技法」を身に着けてはじめて「大学生」になるのです。「大学生」になってください。


井戸 正伸 (Masanobu Ido)  政治学 - 比較政治学

■教育・研究内容
 腐敗していたものの安定していた自民党一党支配の後に登場したのは,二大政党政治ではなく,小党乱立のもと理念なき合従連衡が繰り返される政治の混迷でした。日本経済も長期停滞から回復する兆しが見えません。世界に目を転じれば,2008年の世界経済危機は、ネオリベラリズムの時代の終焉を示唆しています。混沌とする21世紀の政治経済を理解するために,比較政治学の手法により先進各国の研究を進めています。
■主要著作
 ・編著書Varieties of Capitalism, Types of Democracy and Globalization (London: Routledge, 2012).
 ・共著書『比較政治経済学』有斐閣,2004年.
 ・共著書『改訂版 比較政治学』放送大学教育振興会,2004年.
■教員からのメッセージ
 冷戦終結以後,世界政治の構造は大きく変わりました。イスラムの台頭による「文明の衝突」,日中関係の緊迫,アメリカの経済的覇権。めまぐるしく変転する国際情勢の下,日本は何処に向かうのか? 最新の政治学の諸理論を学び,自分の頭で考える力をつけましょう。


稲葉敏夫 (Toshio Inaba)  経済学 - 計量経済学/非線形動学理論

■教育・研究内容  
 食料消費の動向を可能な限りデータに基づいて分析しています。最近では,少子高齢化の進展を踏まえつつ分析しています。例えば肉と魚は年齢・世代によって消費の仕方が異なります。
 経済学でも簡単化のため,しばしば経済変数間の関係を比例的(線形)にとらえます。多くの場合はそれで十分説明できます。しかし,特に大きな変化など従来の理論では説明ができない場合には,比例的に捉えない非線形動学理論が有効となります。 
 学生のみなさんには演習への積極的参加を望みます。
■主要著作
 ・共著書『経済・経営統計入門(第3版)』共立出版,2010年.
 ・共著論文“Chaos, complex transients and noise: illustration with a Kaldor model,”Chaos Solitons & Fractals, 1996.
 ・著書『ベイズ統計学と計量経済学』丸善出版サービスセンター,1980年.
■教員からのメッセージ 
 社会について関心を持つことは大事です。しかし例えば身近なコンビニを考えることも,やはり大事です。コンビニの動きを観察すれば,社会の動きが見えてくることもあります。現実の何かに関心を持つことから始めてください。


遠藤美奈 (Mina Endo)  法学・政治学 - 憲法学

■教育・研究内容
 日本国憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づき,生活や労働の場における人々の窮境に際して,公権力はどのような責任を負うのかに関心があります。自由が損なわれず,人らしく生きられる給付及び法規制のあり方や,行財政上の責任の分担についても考えています。
授業では,子どもと労働者としての教師の権利・自由が守られることと,教育を含む政治・社会を憲法に照らして客観的・批判的に捉えられることの重要性を意識しながら,憲法を教えています。
■主要著作
 ・論文「『健康で文化的な最低限度の生活」とは何か――『生存』権と労働の憲法的再審」山森亮編『労働再審《6》労働と生存権』大月書店,2012年,53-86頁.
 ・論文「福祉国家の憲法枠組み――フィンランドにおける社会保障の権利・平等・デモクラシー」『憲法問題』20号,2009年,67-79頁.
 ・論文「生活保護と自由の制約──憲法学からの検討」『摂南法学』23号,2000年,33-60頁.
■教員からのメッセージ
 大学生活の中では,答えが見つからないかもしれない「問い」に向き合う,静かで孤独な時間をもってください。


北澤 裕 (Yutaka Kitazawa)  社会学 - 現代社会論/視覚文化論

■教育・研究内容
 文化とりわけ視覚文化と人や社会との関係を研究しながら,現代社会のさまざまな特徴を取り上げ授業で教えています。今日の社会は,文字を読み考えることよりもテレビやインターネットの画像と映像を見る,あるいは観光に出かけ直接異文化を見て体験することなどにより大きな影響を受けており,見るといった視覚文化は,私たち人間や社会をどのように作り上げ変えているのかを考えることは重要な意義を持っています。
 視覚文化にこだわらず,さまざまな文化が人と社会にどのような係わり合いを持っているのかを各自の関心にもとづいて取り上げ,追究してゆくことをゼミの目的としています。
■主要著作
 ・共著書『風景の意味-理性と感性』三和書房,2008年.
 ・共著書『総合的な学習の時間』学文社,2007年.
 ・著書『視覚とヴァーチャルな世界』世界思想社,2005年.
■教員からのメッセージ
 ゲームや趣味が楽しいのは,行っていることについて良く知っているからです。授業の内容についても同じことがいえます。自分で知ろうとし,その科目についての知識が増せば増すほど楽しくなります。学び知識を増やそうとする姿勢が何ごとにつけ人生を楽しく過ごす方策だと思います。


北山雅昭 (Masaaki Kitayama)  法学・政治学 - 民法学/環境法学

■教育・研究内容
 民法学については,民法(学)という法律(学)領域の歴史と基礎的な特徴・考え方,しくみについて考えること,働いて金銭を手にし商品を購入する,そのために多様な契約を取り結ぶ社会(経済的市民社会)と法の機能や役割について検討しています。特に加害者によって損害を被った被害者の救済(賠償など)を図る不法行為法領域について研究してきました。また環境を守る法制度(環境法)については,特にドイツの法制度の歴史的変遷,なかでも自然保護法とナチズム ・全体主義との関わりについて研究しています。法制度の歴史的変遷とその時々の人びとの(法)意識や,法制度が形づくられるうえで作用する諸要因,経済・社会構造と人々の意識状況について関心を持って研究しています。
■主要著作
 ・共著書『ライフステージから学ぶ法律入門』ミネルヴァ書房,2014年.
 ・共著書『レクチャー環境法』法律文化社,2010年.
 ・共著書『環境・公害法の理論と実践』日本評論社,2004年.
■教員からのメッセージ
 目先の必要からではなく長期的,歴史的視野から,個人の私的空間ではなく世界的な視点からものごとを考えることが大切です。多種多様な多数の人々によって形づくられているこの世界の,多種多様な見方考え方を共に学んでいきたいと思っています。


熊谷善彰 (Yoshiaki Kumagai)  経済学 - 金融論/ファイナンス論/金融工学

■教育・研究内容
 為替市場や株式市場といった金融市場において取引が行われ,価格が変動するメカニズムとその計測方法,企業経営や公共事業における意思決定に際して,将来の不確実性を適切に考慮に入れる方法を研究しています。授業では,経済全体においてマネーと信用が果たしている役割,経済を安定的に成長させるための金融システムと金融政策,リスクとリターンの関係,分散投資の効果,企業の資金調達と投資,などについて考えていきます。
■主要著作
 ・著書『コンパクト金融論』新世社,2010年
 ・著書『金融時系列データのフラクタル分析』多賀出版,2002年
■教員からのメッセージ
 経済活動には負債・資本等の形で必要な資金を調達し,リスクを適切に負担してもらう仕組みが不可欠です。金融技術が発達する中,金融危機の発生を防ぎつつ,安定成長に寄与する金融システムの構築が求められています。


黒田祥子 (Sachiko Kuroda)  経済学 - 労働経済学/応用ミクロ経済学

■教育・研究内容
 日本の労働市場について,経済学の視点から研究しています。テーマは,賃金,失業,ワークライフバランスなど多岐に亘っています。この数年は,日本人の長時間労働や働き方の問題に関して,データを用いた実証研究を多角的に行っています。
 ゼミでは,ミクロ・マクロ経済学,統計学,計量経済学の基礎を学んだ上で,簡単なプログラミングも習得できるようカリキュラムを組んでおり,最終的には実証論文を執筆できるレベルになります。
■主要著作
 ・共著書『労働時間の経済分析 超高齢社会の働き方を展望する』日本経済新聞出版社,2014年(日経・経済図書文化賞受賞).
 ・共著論文“Is Downward Wage Flexibility the Primary Factor of Japan's Prolonged Deflation?,”Asian  Economic Policy Review, 9, 2014, pp.143–158.
 ・論文「中間の年齢層の働き方――労働時間と介護時間の動向を中心に」『日本労働研究雑誌』,2014年,59-74頁.
■教員からのメッセージ
 数字はパワフルです。学生の皆さんには,経済学の基礎を学ぶことで経済学的な思考センスを身につけるとともに,データを観察し,実際に触ってみるといった学びを通じて,データを読み解く力を養ってほしいと思います。


近藤孝弘 (Takahiro Kondo)  社会学 - 政治教育学

■教育・研究内容
 ドイツとオーストリアの政治教育を研究しています。特に戦後の両国で民主主義社会がどのように建設されたのかが関心の中心にあります。民主主義を維持・発展させることは一般に思われているほど簡単ではありません。それは,日本はもちろん多くの諸国が今も抱える課題です。この点で両国は理論的・実践的な参照例として重要であると思われます。
 なおゼミの学生諸君はドイツやオーストリアあるいは日本に限らず,アメリカやフランス,タイ,サウジアラビアなど様々な地域に目を向けて,社会と教育との関係について調査研究を進めています。
■主要著作
 ・編著書『統合ヨーロッパの市民性教育』名古屋大学出版会,2013年.
 ・著書『ドイツの政治教育』岩波書店,2005年.
 ・著書『自国史の行方-オーストリアの歴史政策』名古屋大学出版会,2001年.
■教員からのメッセージ
 ひとに教えることは最良の学習方法だと言います。多くの方に,市民社会の担い手を育てる方法について考える経験を持っていただき,それを自らの政治的市民としての成長の糧としてほしいと思います。


千野貴裕(Takahiro Chino)  政治学 - 政治思想史

■教育・研究内容
 行政府や立法府で行われる「政治」は狭義の政治です。諸個人が他人と取り結ぶ関係や、われわれが不可避的に巻き込まれる社会関係も、他者との対話や権力関係といった要素を含む点で、政治の対象です。政治思想史は、過去の思想家がこうした広い意味での政治を分析し取り出した人間観、社会観、政治観を研究する学問です。そうすることで、現在のわれわれのあり方や考え方を絶対視せず、政治社会の基礎単位としての人間、また多様な人間を包摂する制度について考えることが政治思想史の大きな目的です。私自身は19-20世紀のイタリア政治思想を専門としています。
■主要著作 
 ・論文「グラムシにおける二つの「倫理国家」概念:現代国家の分析と未来社会の予測」『社会思想史研究』(40): 119-37, 2016年.
 ・共著書(姜尚中・齋藤純一編)『逆光の政治哲学』法律文化社, 2016年.
 ・論文「アントニオ・グラムシのカトリック教会論:クローチェの教会批判の検討を中心に」『政治思想研究』(15): 248-77, 2015年(政治思想学会研究奨励賞受賞).
■教員からのメッセージ
 現代は間違いなく不透明で困難な時代ですが、人類が困難な時代を経験するのは初めてではありません。歴史上の様々な困難と人間が格闘した記録の集成が政治思想史です。政治思想史を学ぶことを手がかりにして、現代の問題と格闘する体力を身につけて欲しいと願っています。


花田達朗 (Tatsuro Hanada)  マスコミュニケーション学 - ジャーナリズム/メディア制度論

■教育・研究内容
 コミュニケーション,メディア,ジャーナリズムの3つの相互関連を社会科学的に研究しています。それらをつなげるものとして制度の理論を考えてきました。同時に,グローバル・エデュケーター・センター(GEC)ではジャーナリスト養成教育を副専攻として提供する仕事も担当しています。
 ゼミでは以上の3つの関係を捉えるための理論や概念を学んで,分析の道具を手に入れ,それをフィールドワークやケーススタディーを通じて「現実」のなかで試してみるという順番でやっています。
■主要著作
 ・編著書『内部的メディアの自由』日本評論社,2013年.
 ・編著書『レクチャー現代ジャーナリズム』早稲田大学出版部,2013年.
 ・著書『メディアと公共圏のポリティクス』東京大学出版会,1999年.
■教員からのメッセージ
 大学は大きな組織で,たくさんのものを学生諸君に提供しています。学部教育だけではありません。中央図書館やGECなどもみなさんの授業料で賄われています。与えられるのを待っているのではなく,自分に役立つものを取りにいくという姿勢で大学を活用してください。


若林幹夫 (Mikio Wakabayashi)  社会学 - 都市論/メディア論/時間-空間論

■教育・研究内容
 都市の比較社会学と現代都市論を仕事の中心に,郊外論やショッピングモール論,電話を対象としたメディア論、地図を対象としたメディア論、夏目漱石の小説を題材とした近代社会論,未来の想像の形式をめぐる時間論と想像力論,等々の研究をしてきました。授業では社会学と都市論の方法と対象を検討し,ゼミでは「時間と空間の社会学」をテーマにしています。「人が他者と共に社会を生きるとはどういうことなのか?」が,これらを貫く共通の問題意識です。
■主要著作
 ・著書『未来の社会学』河出ブックス,2014年.
 ・著書『モール化する都市と社会』NTT出版,2013年.
 ・著書『社会学入門一歩前』NTT出版,2007年.
■教員からのメッセージ
 社会学を学ぶと,これまで当たり前だと思ってきた社会のあり方や,社会を生きる自分や他人のあり方が,それまでとは違って見えてきます。人によってはそれを不安と思うかもしれません。けれども,そこからより大きな自由も拡がってゆくのです。


藁谷友紀 (Tomoki Waragai)  経済学 - 経営経済学

■教育・研究内容
 景気循環が量的変化であるのに対し,構造変化は質的変化を伴います。構造変化時に企業は適応的行動をとるとともに,その行動の内容は当該企業の競争力につながります。他方,質的変化を技術革新に起因する発展現象として捉えたのがJ. Schumpeterです。技術革新の担い手は企業家(entrepreneur)であり、その行動は,能動的で構造変化を創り出します。研究テーマは,構造変化と企業行動のダイナミズムの関係についての理論的,実証的分析です。
■主要著作
 ・共著書 (荒川区自治総合研究所編)『地域力の時代』三省堂,2012年.
 ・共編著書『経営学のフロンティア』(藁谷他監修『21世紀経営学シリーズ』10),学文社,2004年.
 ・著書Unternehmen im Strukturwandel - Analyse von Strukturbruechen, Gabler Verlag, 1990.
■教員からのメッセージ
 地中海に浮かぶ四国の半分程の島であるキプロスの金融システムの動揺が,あるいはバルカン半島にある歴史の国ギリシャの財政状況の悪化が,世界の経済を大きく危険にさらすのが現代です。社会現象,経済現象を冷徹に分析する力と,自身の夢に向かって進む情熱が,若い皆さんにあらためて求められています。